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体験談を寄せていただいた稲田氏に感謝いたします。


近畿圏での捕獲体験談

各地で「元々飼い主が飼育していたものが、手におえなくなり放流されたと思われる」魚が見つかりだしたのは、もうずいぶん前の事ですね。  特にその例が多いのは琵琶湖ですが、他の場所でも大小さまざまな魚が今もなお見つかっています。  このようなニュースをはじめて聞いたとき、心底驚いたものでした。  でも、自分の身の回りではその様な話を殆ど聞かなかったので、はじめはそれほど重要な事として捉えていませんでした。  ですが、近年私の身の周りでも本来そこにいなかったはずの魚たちが続々と捕獲されるようになり、だんだん重大な問題として実感するようになっていきました。  そして私自身も、今年になって3匹の元観賞魚を捕獲することとなりました。  その後、調べていくうちに様々な事実が明らかになってきました。

今回、この場を借りて話させていただくのは、近畿地方を流れるM川とT川周辺で実際に起こっている、観賞魚の密放流による帰化の現状です。  最初にこの周辺でこのような魚たちが見られはじめたのは、1995年の事でした。  1995年と言えば、私たちの地方を忘れもしない『阪神大震災』が襲った年でもあります。  この震災により多くの水槽が壊れ、飼育できなくなって、いわば「少し間違った愛情」から、川に放流してしまう、と言う図式があったようです。  考えてみれば、このころは、当時今よりもかなり価格が高かったであろう大型水槽でゆとりを持って大型魚を飼育している人が多くいました。  観賞魚(=大型魚)の飼育に対する考え方は今とほぼ同じくらいか、それ以上だったかもしれません。  後述しますが、「確信犯的に飼い切れない魚を購入する」人や「あまりにも狭すぎる水槽で大型魚を飼育する」人が多くなってきている現在の状況からみても、その点は明らかだと思います。

1995年当時に放流された魚の多くは、それまで大切に飼われていた魚ばかりだったと思われます。  ところが、最近見つかっている魚は、どうも違うようなのです。 ヒレに段がついていたり、湾曲していたり、鰓がめくれていたり、ヒレの大きさが違ったり、体がゆがんでいたりと、不適切な環境下でキープされていた事を物語る魚が多くいます。  その様な魚たちを見るたびに、私はなんともやりきれない気持ちになります。  同時に、どんな飼い主に当たったのだろうかとも思うのです。  最近、確信犯的に飼い切れないと解っていながら生体を購入する人が増えているようです。

実際、ショップの人からも、「客の中にM川にアロワナとガーを放したと言っている人がいる」と聞いています。 そこでは、「アロワナやガー(アリゲーターガー)を飼育するには、最低でも200cm位の水槽が要る。 魚が100cm超えるから」と言い切っていて、それ以下の水槽しかないと言う人には売らないようにしています。  にも関わらず、「買ったものの飼い切れなくなったから放した」と言って来る人がいるそうなのです。  店員さんも、「ちゃんと言いに来てくれたら引き取るのに、何で言ってくれないのだろう」と悲しげでした。  命あるものを飼うに当たって最低限必要なのは、自分が命を預かっているという自覚と、最後まで面倒を見切る覚悟ですよね。  しかし、それすらできない人が増えています。  そして、その様な人に限って、扱いきれないような種類に手を付け、密放流に至る場合が多いようです。  全く、呆れてしまいます。  だって、これでは「子育てに疲れた」と言って、子供を捨てたり殺したりする親となんら変わりないではありませんか。

そこで魚達を保護するべく、私は独自に活動を始めました。  活動と言ってもそんな大げさなものではなく、ただ魚を釣り上げて引き取り手を捜すだけのことですが、不幸な魚達に第二の魚生をまっとうに歩んでもらいたいという思いで、日々川を駆け回っています。  全く成果のあがらない日が殆どで、そのため何度も諦めようとした事がありました。  が、Web上でお会いした皆様の応援と励ましのお陰で、今でも行動を続ける事ができています。  そして、実際にわずかながら成果を上げる事ができました。 なるべく手短にその結果を報告させていただきます。

2002年7月10日に捕獲した、86cmのアリゲーターガー

私が捕獲した最初の元観賞魚は、86cmのアリゲーターガーでした。  なんとか釣り上げ、家に持ち帰り皆様に報告した所、たいへんな反響を頂きました。(皆様、どうも有り難うございました) しかし、ひとつ困った事がありました。それは、最初この魚の引き取り先が全く見つからなかったのです。  近所の水族館に問い合わせたのですが、残念ながら飼育槽が一杯で引き取る事はできないとのことでした。  最初、水族館に引き取ってもらおうとしていただけに、完璧にあてが外れました。  我が家にはこのサイズの魚をキープしておけるだけの設備が無く、とりあえずビニールプールに水を入れエアレーションしておいたのですが、狭いプールの中にたたずむガーを目の前にして、なんとも言えないどんよりとした気持ちになっていきました。  我が家で飼育し続けるするのは不可能ですが、逃がす訳にもいきません。  やっぱり、最後の選択しかないのか・・・・と思っていたまさにその時でした。  天邪鬼さんと紅小僧さんからメールが入り、アリゲーターガーを責任を持って飼育していくので引き取りたいとの事。  私は一も二もなくお願いしました。  少々無理を言って早く引き取りに来ていただき、ガーは引き取られていきました。  最初の一ヶ月は全く餌を受け付けず、白点病に罹るなどのアクシデントもありましたが、現在はしっかり餌も食べて元気にしているそうです。  今は180*90*60cmの水槽で飼われていますが、近いうちに200*200*100cmの水槽に移し、屋外で飼育されるそうです。  ガーは日本の川にいてはいけない魚ですし、保護していく必要があると思います。  それに、これほどまでにガーのことを考えて、大型水槽を用意して面倒を見ていただいているので、ガーも幸せに違いないと思っています。  飼育を買って出ていただいた事を、何より感謝しています。

2002年8月12日に捕獲した、60cmのショートノーズガー

アリゲーターガーを引き取りに出した7月12日、所用があって出かけていた私は同じ川で3匹のガーと1匹のアロワナを目撃しました。  一息ついたと思っていただけに、たいへんショッキングで、がっかりきたものでした。  それから丁度一ヶ月経った8月12日の夕方、知り合いの塾の先生と釣りをしていた際、60cmのショートノーズガーを目撃、捕獲に成功しました。  アリゲーターガー捕獲の後知り合った方で、「次に釣り上げられたら引き取りますよ」と言って頂いていたので、すぐに引き取っていただきました。  釣り上げてすぐに水槽に入れただけあって、状態も良く、すぐに落ち着きました。  これほどまでに素早く解決できた事を、たいへん嬉しく思いました。  魚は現在90cm水槽に入れられていますが、環境に馴染んでとても大人しくしています。  180cm水槽の導入が決定し、現在到着待ちの状態ですので、これからどんどん状態はよくなっていくものと思われます。

2002年8月16日に捕獲した、60cmのシルバーアロワナ

ショートノーズガー捕獲の2日後の14日、私は某オフ会に参加させていただいていたので、鳥取にいました。  そこでも、M川とI川の現状を聞いていただきました。  15日の朝方にお開きとなり、その後帰路に着いたのですが、そのわずか1日後の16日夕方、泳いでいるアロワナを橋の上から目撃。  写真撮影と捕獲にも成功しました。 とにかく生かして持ち帰り、とりあえず空いていた90cm水槽に収容しました。  ハリの掛かりが浅かったために、状態は最高でした。  水槽内をゆっくり泳ぐアロワナを見つつ、これからの事をどうするか考えながら、その日は眠りにつきました。  朝私が起きたとき、水槽を見るとアロワナは相変わらず緩やかに泳いでいました。  ところが、しばらくすると、見ている前で突然激しく痙攣をはじめ身体を横たえてしまいました。  あまりにも突然の出来事に驚きながらも、まだ息があるのを確認した私は、なんとかアロワナに頑張ってもらいたいと言う一心で蘇生させようと試みました。  身体を通常の状態になるように保ち、呼吸の助けになればとエアレーションの量を増やしてみたりしました。  その甲斐あって、一時は持ち直し、再びゆるゆると泳ぎ始めました。  しかし、それから間もなくまた身体を横たえてしまいました。  今度もなんとか立ち直って欲しいと思いながら必死で蘇生させようと試みました。  が、今度は明らかに先程よりも弱っており、もはや手の施しようがありませんでした。  そしてその後、静かにそっと息を引き取りました・・・・・。  死に至った原因は、釣り上げられて狭い水槽内に入れられた事によるストレスであると思われます。  その後、庭に深く穴を掘り、アロワナの亡骸を埋葬しました。  命というものはなんて脆いのだろう・・・・。  そう思うと、涙が出ました。  自分がしたことは本当に正しかったのかと言う疑問と共に、魚に対して何もしてやれなかった自分の無力さを感じずにはいられませんでした。

密放流に対しての思い

観賞魚が放流されるようになってから、かなりの年月が経ちました。  中には、それが一番よい事だと心から信じて行った人もいたようです。  しかし、それが例え良かれと思って行った行為でも、それが元で生態系を乱してしまいます。  ブラックバスやブルーギルの前例もあります。  もし、仮に河川などに定着し、絶滅危惧種や天然記念物に対する重度な食害などが見られたら、魚とアクアリストそのものが『悪』のように伝わり、行政が観賞魚の輸入を禁止するなどの措置をとる可能性もあります。  アリゲーターガーやウェルズなど、超大型でなおかつ日本に定着する可能性のあるものは、特に注意が必要と思います。  これ位の魚になると、人的被害が出る可能性も否定できません。  その様な事が起こってからでは遅いですし。  そしてなにより、魚達に過酷な運命を与えてしまう事、これが何よりの罪と思います。  今までに放流された魚の数は、かなり多くにのぼる事と思います。  その多くは、きっと不幸な一生を終えてしまった事でしょう。  しかし、私たちは、不幸な魚たちをこれ以上増やさないようにする事ができると思うのです。  今、その事について、考える時期に来ているのではないでしょうか。